夜勤なしで働く選択肢と、年収の変わり方の読み方
日勤のみ・訪問看護・クリニック・介護系施設で、夜勤の有無や年収の平均はどう違うか。日本看護協会の賃金調査の数字と、その読み方、職場に聞くことを整理します
「夜勤のない働き方に変えたら、年収はいくらになるのか」。これは、いちばん知りたい数字だと思います。
先に正直に書くと、「夜勤をやめると年収はいくら下がる」と言い切れる公的な数字は、この記事で使った資料の範囲では確認できませんでした。 確認できたのは、就業先ごとの年収の平均、就業先ごとの夜勤・オンコールの状況、夜勤手当の規模です。この記事では、その3つを使って、年収の変わり方を自分で読むための手順を整理します。
数字はすべて調査の平均や割合で、あなたの職場の額ではありません。体調がつらいときは、数字を調べる前に主治医や産業医に相談してください。この記事は、診断や法的な判断をするものではありません。
先に押さえる3つのこと
- 夜勤のない働き方は、就業先の種類だけでは決まりません。日勤のみの人は、訪問看護ステーションで66.2%、診療所で65.1%、介護系サービスで60.5%、病院でも27.6%でした(雇用形態を問わない回答者)[S56]。
- 就業先別の年収(正規雇用フルタイム)の平均は、病院が約576万円、訪問看護ステーションが約550万円、診療所が約536万円、介護系サービスが約513万円でした[S56]。ただし、夜勤の有無で分けた数字ではありません。
- 夜勤がなくても、夜の負担がなくなるとは限りません。訪問看護ステーションの勤務者の63.1%が、調査の前月にオンコール待機をしていました[S56]。
選択肢ごとに、調査で分かること
夜勤のない職場に移れば楽になる、と期待しているほど、「そうとは限らない」という数字は気が重く感じられるかもしれません。それでも、先に知っておくほうが、移ったあとの「こんなはずでは」が減ります。
日本看護協会が2025年に行った「看護職員の賃金に関する実態調査」[S56]から、就業先ごとの様子を並べます。この調査は日本看護協会の会員から無作為に抽出した人への調査で、全国の看護職員の代表値ではありません。診療所(正規フルタイムの回答90人)や介護系サービス(同170人)は、回答数が少なめです。
| 就業先 | 日勤のみの人の割合(雇用形態を問わない回答者) | 施設に看護職員の夜勤が「ある」割合(正規フルタイムの回答者) | 調査前月にオンコール待機をした割合 |
|---|---|---|---|
| 病院 | 27.6% | 82.3% | 6.5% |
| 訪問看護ステーション | 66.2% | 20.2% | 63.1% |
| 診療所 | 65.1% | 36.7% | 17.9% |
| 介護系サービス | 60.5% | 61.8% | 20.0% |
「介護系サービス」には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、有料老人ホームなどが含まれます[S56]。見落としやすいのは、次の2点です。
- 病院の中にも、日勤のみの人がいます。 夜勤がある病院に勤める正規雇用フルタイムの回答者のうち、夜勤をしていない人は24.1%でしたS56]。病院側の調査でも、正職員の人材確保のために「日勤のみ」を導入している病院は54.7%です[S28]。同じ職場で働き方を変えられるかは、聞いてみる価値があります。制度の導入割合は、[夜勤は「続ける」か「やめる」かの二択ではありませんで整理しています。
- 「施設だから夜勤がない」とは言えません。 介護系サービスでは、看護職員の夜勤が「ある」と答えた人が61.8%でした[S56]。診療所でも36.7%です。
外来や健診センター、企業の健康管理部門など、この調査が区分を分けていない職場については、数字を出していません。それらの職場の夜勤の有無や年収は、求人票と面談で確かめることになります。
年収の変わり方は、3つに分けて読む
収入が下がるかどうかは、生活の計画に直結します。曖昧なままだと、決めるのも先延ばしにしたくなります。
年収の変化は、次の3つに分けると読みやすくなります。
① 夜勤手当が、どれくらい含まれているか
夜勤をしている病院勤務者(正規雇用フルタイム)の、2025年1月に支給された夜勤手当は、深夜の割増賃金を含めて平均3万2,192円でした[S56]。この数字は、回答した人(無回答41.1%を除く)の1か月分の平均です。
- 単純に12倍すると約38.6万円ですが、これは1月だけの額を掛けた計算上の目安です。月によって夜勤の回数は変わります。
- 同じ調査で、その月の夜勤回数の平均は、三交代の準夜勤で3.9回、深夜勤で3.7回、二交代で4.2〜4.4回でした[S56]。
自分の明細の額は、これと違って当然です。1回あたりの手当の水準と、「単価×回数」で見る方法は、夜勤手当は15年ほぼ横ばい。求人票では「単価×回数」で見るにあります。
② 夜勤手当以外は、変わるのか
夜勤がなくなると減るのは、夜勤手当と深夜の割増賃金です。一方、基本給や賞与が、夜勤の有無で変わるかどうかは、職場の規定しだいです。この調査では、年収を夜勤の有無や勤務形態で分けた表を確認できませんでした。だから、ここは調査では言えず、職場に聞く項目になります。
③ 夜勤以外の差のほうが、大きいことがある
同じ病院勤務者(正規雇用フルタイム)の年収の平均を、役職と年齢で見ると、次のようになります[S56]。
| 区分 | 年収の平均 |
|---|---|
| スタッフ(非管理職) | 約526万円 |
| 中間管理職(主任・副看護師長相当職) | 約633万円 |
| 24歳以下 | 約394万円 |
| 55〜59歳 | 約677万円 |
役職では約106万円、年齢階級では約284万円の差があります。就業先どうしの平均の差(病院と訪問看護ステーションで約26万円、病院と診療所で約41万円、病院と介護系サービスで約63万円)には、こうした役職や年齢の構成の違いも混ざっています。
たとえば、非管理職のスタッフどうしで比べると、病院が約526万円、訪問看護ステーションが約520万円で、差は約6万円でした[S56]。ただし、この平均も、夜勤の有無を揃えた比較ではありません。
年収の表は、年収の回答が2割ほど無回答(病院24.1%、訪問看護ステーション21.7%)で、平均は答えた人だけの値です[S56]。非常勤・パートの年収は含まれません。
夜勤がなくても、夜の負担は残ることがある
夜勤から離れたい理由が体の負担なら、オンコールの数字は、あまり見たくないかもしれません。大事なところなので、数字をそのまま置きます。
訪問看護ステーションでは、夜間・休日のオンコールが、働き方の一部になっていることがあります。調査前月(2024年12月)にオンコール待機をした人は、訪問看護ステーションで63.1%、病院で6.5%でした[S56]。
オンコール待機をした訪問看護ステーションの勤務者の手当は、次のとおりです[S56]。
| 内容 | 1回あたりの平均額 | 前月の平均回数 |
|---|---|---|
| 待機のみ | 2,233円 | 7.7回 |
| 電話対応 | 609円 | 5.0回 |
| 緊急出動(時間外手当を除く) | 1,791円 | 2.3回 |
夜勤手当とオンコール手当は、別の仕組みです。「夜勤なし」の求人でも、オンコールの回数と手当は、別に確認します。病棟と訪問看護の違いは、病棟勤務と訪問看護の働き方の違いで整理しています。
また、時間外労働も年収に関わります。2025年1月の時間外労働時間数の平均は、病院勤務者で15.5時間、訪問看護ステーション勤務者で15.8時間でした(正規雇用フルタイム)[S56]。このうち時間外手当が支払われた時間数は、病院で9.1時間、訪問看護ステーションで11.4時間です。夜勤をなくしても、時間外がどれくらい出るかで、月の額は動きます。
私たちの読み方
「夜勤をやめたい」と「収入は守りたい」が同時にあるとき、どちらも手放せない気持ちが、判断を重くします。ここからは、数字を踏まえた私たちの読み方です。出典のある事実ではなく解釈なので、自分の明細と職場の答えで確かめてください。
数字が意味すること。 日勤のみの人の割合は、病院で27.6%、訪問看護ステーションで66.2%でした[S56]。夜勤の有無は、就業先の種類より、その職場での配置や条件で決まる面が大きい、と私たちは読みます。夜勤のある病院の正規雇用フルタイムの回答者でも、夜勤をしていない人が24.1%います[S56]。年収の差も、同じように読みます。就業先どうしの平均の差には役職や年齢の構成が混ざっていて、非管理職のスタッフどうしで比べると、病院と訪問看護ステーションの差は約6万円でした[S56](夜勤の有無を揃えた比較ではありません)。就業先を変えるだけで年収が大きく動く、と読むのは早い、と私たちは考えます。また、夜勤手当の月平均3万2,192円を12倍した約38.6万円は、病院の正規雇用フルタイムの平均年収(約576万円)の1割に届きません。夜勤をしている人の手当と全体の平均を並べた粗い比較なので、目安にとどめてください。
トレードオフ。 夜勤手当を手放す代わりに、睡眠や生活のリズムを取り戻せる可能性があります。病院に残って日勤のみになる道は、慣れた職場で続けられる反面、配置される部署や業務が限られるかもしれません。移る道は選べる職場が広がりますが、訪問看護ステーションでは、勤務先に看護職員の夜勤があると答えた人が20.2%と少ない一方、オンコール待機をした人は63.1%でした[S56]。夜の負担が「決まった夜勤」から「いつ鳴るか分からない待機」に変わるだけ、ということもあり得ます。
条件別の見立て。
- 夜勤をやめたい理由が睡眠や体調なら、オンコールの回数と、実際の呼び出しの多さを最初に確かめます。
- 理由が「夜に家にいたい」なら、オンコールの待機も夜に縛られます。先に、今の職場で日勤のみの配置が選べるかを聞いてみる価値があります(日勤のみを導入している病院は54.7%です[S28])。
- 収入が最大の不安なら、明細の夜勤手当の額と、基本給・賞与が夜勤の有無で変わるかの規定を確かめます。ここは調査では分からない部分です。
- 訪問看護や介護系サービスを考えているなら、「夜勤なし」の求人でも、オンコールと時間外の出方を別に聞きます。
見立ての根拠と、変わる条件。 根拠は、日本看護協会の賃金調査[S56]と病院調査[S28]です。賃金調査は会員への調査で、診療所や介護系サービスは回答数が少なめです。夜勤の有無で年収を分けた調査が出れば、「確実に言えない」部分は変わります。自分の明細から計算した額が、ここでの平均と違うときは、自分の数字を優先してください。
今週やること
明細を開くのが少し怖い、という人もいるかもしれません。見るのは数字だけで、今日決める必要はありません。
直近の給与明細を1枚出して、次を書き出してください。
- 夜勤手当(深夜の割増賃金を含む)の額と、その月の夜勤回数
- 基本給の額
- 時間外手当の額
- その他の手当(住宅・資格・通勤など)
夜勤手当の欄は、夜勤をやめたときに確実に減る部分です。ほかの欄が変わるかどうかは、次の質問で確かめます。年収の分け方は、看護師の年収・基本給・夜勤手当の見方で説明しています。
職場に聞いてみたいこと
条件を聞くと、辞めたいのだと受け取られないか、と気になることがあります。日勤のみの働き方を取り入れている病院は半数を超えるので[S28]、聞くこと自体は特別な質問ではありません。
今の職場でも、次の職場の候補でも、同じ質問が使えます。
夜勤のない働き方について
- 日勤のみ(または夜勤なし)の配置は、正規雇用でも選べますか。前例はありますか。
- 日勤のみにした場合、基本給・賞与の計算は変わりますか。夜勤手当のほかに、なくなる手当はありますか。
- 日勤のみの人が、行う業務や、担当する部署は決まっていますか。
夜の負担が残らないかについて
- オンコールや夜間の呼び出しはありますか。月に何回、1回いくらで、実際の呼び出しはどれくらいですか。
- 夜勤がある施設の場合、看護職員の夜勤はありますか。(介護系サービスや診療所は、施設ごとに違います)
お金について
- 時間外は、月にどれくらい出ていますか。申請した時間は、全部支払われていますか。
- 求人票の年収は、どんな前提(夜勤の回数、役職、賞与の月数)の金額ですか。
訪問看護を含む介護サービスの事業所は、公表されている情報を事前に調べることもできますS5]。求人票の読み方は、[看護師の求人票で確認したい条件にあります。
よくある疑問
夜勤をやめると、年収はいくら下がりますか。
この記事の出典の範囲では、金額は示せません。日本看護協会の調査は、年収を就業先・役職・年齢で分けていますが、夜勤の有無では分けていません[S56]。分かるのは、夜勤をしている病院勤務者の夜勤手当(深夜割増を含む)が、2025年1月で平均3万2,192円だったことまでです。自分の場合は、明細の夜勤手当の額と、基本給・賞与の規定で計算します。
病院のままで、夜勤だけやめられますか。
病院の54.7%が、正職員の人材確保のために「日勤のみ」を導入しています[S28]。ただし、使えるかどうかは、部署や人員、本人の事情で変わります。個別の運用は、職場に聞くしかありません。
訪問看護なら、夜は楽ですか。
勤務先に看護職員の夜勤があると答えた人は20.2%と少ない一方、オンコール待機をした人は63.1%でした[S56]。夜の負担の形が違うだけで、なくなるわけではありません。
非常勤やパートなら、年収は変わりますか。
この記事の年収の数字は、正規雇用フルタイムの人だけです[S56]。非常勤・パートの年収は含まれていないため、ここでは比べていません。
次に読む
- 夜勤は「続ける」か「やめる」かの二択ではありません
- 夜勤手当は15年ほぼ横ばい。求人票では「単価×回数」で見る
- 「夜勤は月8回」は多いの? 基準の読み方と、職場に聞きたいこと
- 病棟勤務と訪問看護の働き方の違い
参照した公式情報
| 出典 | 対象 | 確認日 |
|---|---|---|
| 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」(2025年) | 看護職員個人調査(日本看護協会の会員を層別無作為抽出)の、正規雇用フルタイム勤務者の年収額(就業先別・表201)、就業先ごとの勤務形態(表172)、夜勤の有無と実施状況(表205・206)、夜勤手当の総額(表207)、オンコール対応の実施状況と手当(表210・211) | 2026-11-03 |
| 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(調査研究報告 No.102) | 病院が人材確保のために導入している取り組み(表63)、夜勤手当額(表58) | 2026-11-03 |
| 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(公表されている介護サービスについて) | 訪問看護を含む介護サービスの事業所情報が同システムで公表されていること | 2026-11-02 |