夜勤手当は15年ほぼ横ばい。求人票では「単価×回数」で見る
病院の夜勤手当は2010年からほとんど動いていません。手当に深夜の割増賃金が含まれるかどうか、単価と月額のずれ、明細・求人票で確かめたい点を、調査の数字で整理します
夜勤を続ける条件として、看護職員が最も多く挙げたのは「納得感のある夜勤手当」(41.4%)でした[S27]。では、その夜勤手当は、この15年でどう動いたのでしょうか。そして、明細に載る「夜勤手当」は、そもそも何に対して払われているのでしょうか。
夜勤をこなした月の明細を見て、この額で釣り合っているのか、よく分からない。額が低いのか、それとも何を数えた額なのかが分からないのか。この記事は、その切り分けのための整理です。日本看護協会の調査から、夜勤手当の水準と推移、手当の仕組み、月額の見え方を確認し、求人票や面談での比べ方を説明します。数字は調査の結果で、職場ごとの実際の額とは違います。お金や法律の個別の助言はできません。
先に押さえる3つのこと
- 定額の夜勤手当の平均は、2010年から2025年まで、ほぼ横ばいです(二交代制で10,745円から11,470円へ)[S29]。同じ調査で、勤続10年の看護師の基本給は、2025年度に前年度より1.6%上がっています[S29]。
- 「夜勤手当」の意味は、職場で違います。深夜の割増賃金を含む定額が52.0%、割増賃金とは別に定額を支給が31.2%でした[S28]。
- 月の手当額は、「単価×回数」の計算と、調査で聞いた実際の額が、そろいません。明細の項目名と、何の回数分かを確かめることが、比べる前の第一歩です。
数字① 夜勤手当の水準と、15年の動き
日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、定額の夜勤手当を支給している病院の、夜勤1回あたりの平均額が示されています[S28]。この額は、各勤務帯で最も長い勤務時間の夜勤の手当額で、深夜の割増賃金と区別されているかどうかにかかわらず集計されています[S28]。
| 勤務の形 | 回答病院数 | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 三交代制の準夜勤 | 768 | 4,300円 | 3,800円 |
| 三交代制の深夜勤 | 771 | 5,211円 | 4,500円 |
| 二交代制の夜勤 | 2,602 | 11,470円 | 11,200円 |
2010年からの推移は、同じ調査のニュースリリースに出ています[S29]。
| 勤務の形 | 2010年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 三交代制の準夜勤 | 4,077円 | 4,300円 |
| 三交代制の深夜勤 | 5,053円 | 5,211円 |
| 二交代制の夜勤 | 10,745円 | 11,470円 |
15年間の変化は、準夜勤で223円、深夜勤で158円、二交代制で725円です。日本看護協会は、この結果を「2010年以降、看護職員の夜勤手当は横ばい」とまとめています[S29]。同じリリースは、看護師の月額給与は上がっているものの、夜勤手当額は10年以上横ばいが続いている、とも書いています[S29]。勤続10年(31〜32歳、非管理職)の看護師の平均基本給与額は、2025年度に254,286円で、前年度より3,906円(1.6%)増えました[S29]。
なお、この額は「定額の夜勤手当を支給している」と答えた病院の平均です。病院ごとの額の平均で、看護職員一人ひとりの受取額の平均ではありません。
数字② 「夜勤手当」の中身は、職場で違う
同じ調査は、平日の夜勤1回に支払われる手当の形も聞いています(3,502施設)[S28]。
| 手当の形 | 割合 |
|---|---|
| 深夜時間帯(22時〜5時)の割増賃金を含む定額の夜勤手当を支給 | 52.0% |
| 深夜時間帯の割増賃金とは別に、定額の夜勤手当を支給 | 31.2% |
| 深夜時間帯の割増賃金のみ支給(夜勤手当はなし) | 4.5% |
| 上記にあてはまるものはない | 7.7% |
| 無回答・不明 | 4.6% |
つまり、上の「平均4,300円」「平均11,470円」には、割増賃金が含まれる職場と、別に支払う職場が混ざっています。同じ額でも、中身は同じではありません。
深夜の割増賃金は、午後10時から午前5時までの労働に対して、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で支払うことが、労働基準法に定められています[S18]。たとえば、通常の賃金が1時間1,500円だと仮定すると、深夜1時間あたりの割増分は375円で、22時から5時の7時間すべてに当たる勤務なら2,625円です(架空の計算で、実際の計算の基礎は職場の規程によります)。これは法律上の最低限の割増の分で、手当の額全体とは別の話です。割増を含む定額の場合、その定額の一部が、この割増に当たっています。
手当の形は、もう一段あります。
- 定額の夜勤手当とは別に、夜勤回数に応じた手当を支給している病院は21.9%(n=2,913)でした[S28]。
- 日本看護協会の賃金調査では、月あたりの夜勤回数が一定回数を超えた場合の増額・加算制度について、「ない」が69.6%で最も多く、「夜勤手当への加算がある」9.2%、「夜勤手当の増額がある」8.0%、「賞与額への反映がある」1.8%でした(3,471施設)[S56]。
また、日本看護協会のガイドラインは、夜勤手当の支給根拠を深夜時間帯の労働への報酬と位置づけている場合、22時以前に終了する勤務(早出や遅出など)は、しばしば手当の支給対象から除外される、と説明しています[S17]。どの勤務が手当の対象かも、職場で違います。
求人票に「深夜割増を含む」といった書き方があるときは、固定残業代の明示ルールも関わります。厚生労働省のリーフレットは、深夜労働や休日労働について固定残業代制を採用する場合も、基本給の額、時間数と計算方法、超過分の追加支払いの3点の明示が必要としています[S8]。
数字③ 個人の月額は、聞き方で数字が変わる
病院の単価から、個人の月額は「単価×回数」で見積もれます。ただ、実際の月額の調査と並べると、きれいには合いません。
日本看護協会の賃金調査(会員への調査で、全国の代表値ではありません)では、病院勤務者(正規雇用フルタイム、夜勤をしている人)に、2025年1月に支給された夜勤手当を、2通りの聞き方で尋ねています[S56]。
| 勤務の形 | 1月の夜勤回数(平均) | ①夜勤手当の総額(深夜の割増賃金を含む) | ②夜勤回数に応じて支払われた手当の総額 |
|---|---|---|---|
| 三交代・変則三交代 | 準夜勤3.9回/深夜勤3.7回 | 29,648円 | 36,506円 |
| 二交代・変則二交代(16時間未満) | 4.2回 | 30,724円 | 41,139円 |
| 二交代・変則二交代(16時間以上) | 4.4回 | 34,092円 | 48,410円 |
| 夜勤をしている病院勤務者の全体 | — | 32,192円 | 43,806円 |
回数は、各夜勤を1回以上行った人の平均です。金額の欄は、①で41.1%、②で36.3%が無回答・不明で、平均は答えた人だけの値です[S56]。調査票は、手当を支給された月と、その手当の算出の対象になった期間を別々に聞いています[S56]。支給された月と、夜勤をした月が、ずれることがある、ということです。
ここで、前の病院調査の平均単価と、この回数を掛けてみます(計算上の目安です)。
- 三交代:4,300円×3.9回+5,211円×3.7回=約36,000円
- 二交代:11,470円×4.4回=約50,000円
この目安は、②の36,506円(三交代)、48,410円(二交代16時間以上)に近く、①の29,648円、34,092円よりは高い数字です。ただし、病院調査と賃金調査は、対象も年も違います。①と②の差が何から来るのかは、資料からは分かりません。分かるのは、同じ「夜勤手当」でも、聞き方で2〜4割ほど数字が変わるということです。
夜勤を続ける条件の中の、手当
「2025年 看護職員実態調査」で、夜勤を続ける条件(3つまで、4,430人)の1位が「納得感のある夜勤手当が支給される」41.4%でした[S27]。2位は「夜勤明けの翌日が必ず休日のシフトとなる」39.7%、3位は「夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できる」35.6%です。
一方、「夜勤回数が多くなるほど、夜勤手当の増額または夜勤手当以外の手当が支給される」を挙げた人は11.2%でしたS27]。上位3つの内訳は、[夜勤は「続ける」か「やめる」かの二択ではありませんにも載せています。
私たちの読み方
手当の額に納得できないとき、「もっと上げてほしい」と「そもそも何の額なのか分からない」が、頭の中で混ざりがちです。ここからは、上の数字を踏まえた私たちの読み方です。出典のある事実ではなく解釈なので、分けて読んでください。
数字が意味すること
単価が15年ほぼ動かず、基本給は動いている[S29]。私たちは、これを「夜勤手当が月給の中で占める位置が、少しずつ小さくなる方向に動いている可能性がある」と読んでいます。ただし、物価の動きと比べる資料は、この記事で確認していません。「実質で目減りした」とまでは言えません。
では、いまの手当は、月の総支給の中でどれくらいの大きさか。目安として、夜勤をしている病院勤務者の夜勤手当の平均32,192円[S56]を、病院勤務者全体の1月の総支給の平均409,436円[S56]で割ると、約8%です。夜勤をしていない人も含む平均で割った粗い数字ですが、手当は、月の総支給の1割に満たない大きさとみられます。夜勤を減らしたときの収入への影響は、この大きさで見積もることから始められます。
また、「夜勤手当4,300円」と「夜勤手当4,300円」が、同じとは限りません。割増賃金を含む定額が52.0%、別に支払うところが31.2%という分布[S28]は、私たちには、額の比較の前に、何が含まれた額なのかをそろえる必要があるという意味に見えます。
トレードオフ
- 1回の額と、1回の長さ。 二交代の1回の額(平均11,470円)は、三交代の準夜勤(4,300円)の約2.7倍、深夜勤(5,211円)の約2.2倍ですS28]。ただし、二交代の1回は長い勤務です。「二交代のほうが手当が得」と単純には言えません。夜勤1回の長さや勤務間隔は、[「夜勤は月8回」は多いの? 基準の読み方と、職場に聞きたいことで整理しています。
- 回数を増やすと、手当は増えるのか。 回数が一定を超えたときの増額・加算がない病院が69.6%でした[S56]。私たちは、多くの職場では、回数を増やした分の手当は、単価の積み上げにとどまると読んでいます。その分の負担は、手当では埋まらないかもしれません。
- 手当と、休息。 夜勤を続ける条件で、手当と並んで上位に来たのは、明けの休みと休憩・仮眠でした[S27]。手当が高い職場が、休息の条件も整っているとは限りません。手当だけで選ぶと、別の条件の弱さを引き受けることがあります。
条件別の見立て
- 求人票に「夜勤手当1回◯円」だけが書かれているなら、割増賃金を含む定額か、別に支払うのかを、先に聞きます。
- 三交代と二交代の職場を比べるなら、1回の額だけでなく、「単価×月の回数」と、1回の長さを並べます。
- 明細の夜勤手当が、「単価×回数」の計算より低いときは、項目の名前、対象になる勤務、支給の月と夜勤をした月のずれを確かめます。
- 夜勤を減らしたとき、手当がいくら減るかを知りたいなら、かんたん計算で、回数だけを変えた差額を出せます。基本給や賞与は変わらない前提の計算です。
- 手当が平均より低いと感じるときは、まず中央値と比べ、そのうえで基本給・賞与・明けの休みとあわせて見ます。年収全体の見方は、看護師の年収・基本給・夜勤手当の見方にあります。
- 夜勤をやめた場合の年収を考えているなら、夜勤なしで働く選択肢と、年収の変わり方の読み方を先に読むと、手当以外に動く部分が整理できます。
- 時短で働いていて夜勤の扱いが気になるなら、時短勤務にすると、看護師の年収はどうなる? 内訳で読む、職場に聞くことを見てください。
この見立ての根拠と、変わる条件
根拠は、日本看護協会の病院看護実態調査[S28][S29]と賃金調査[S56]、看護職員実態調査[S27]、労働基準法の条文[S18]、ガイドライン[S17]です。「手当は月の総支給の1割に満たない」「回数を増やしても単価の積み上げにとどまる」といった読みを引き出したのは私たちで、日本看護協会がそう書いているわけではありません。約8%という数字は、母集団の違う2つの平均を割った粗い数字です。
見立てが変わるのは、次のようなときです。自分の明細の手当が、総支給の1割を大きく超えるとき。回数加算のある職場にいるとき。調査が更新されて、単価が動いたとき。私たちは、あなたの明細も職場の規程も見ていません。自分の数字が、ここでの平均と違うときは、自分の数字を優先してください。
求人票・面談での見方
- 1回あたりの額を確認する。 二交代制の夜勤か、三交代制の準夜勤・深夜勤かで、額の水準が違います。
- 何が含まれた額かを確認する。 深夜の割増賃金を含む定額か、別に支給されるか。回数に応じた手当や、一定回数を超えたときの加算があるか。
- 月の回数を確認する。 「月給に夜勤◯回分込み」と書かれている場合、その回数を確かめます。
- 手当の対象を確認する。 早出や遅出など、22時前に終わる勤務に手当が付くか。
- 夜勤明けの休みを確認する。 翌日が必ず休日か、明け後の勤務があるかを聞きます。
- 仮眠・休憩の実態を確認する。 仮眠室の有無と、実際に取れているかを聞きます。
求人票の月給や年収を中身に分ける方法は、看護師の年収・基本給・夜勤手当の見方で説明しています。
今週やること
明細を見るのは、少し気が重い作業かもしれません。1か月分だけで十分です。直近の夜勤手当の明細を出して、次を書き出してください。
- 夜勤に関する項目の名前と額(夜勤手当、深夜割増、夜勤回数手当など、別々に載っていれば別々に)
- その額の対象になっている夜勤の回数と、夜勤をした月
- 1回あたりに直した額(額÷回数)
1回あたりの額が分かると、この記事の平均や中央値と、おおまかに並べられます。並べて低くても高くても、決めるのはそのあとで構いません。
よくある疑問
夜勤手当が平均より低い職場は、避けるべきですか。
手当だけで判断しません。基本給、賞与、夜勤の回数、明けの休みを合わせて、年収と働き方で比べます。手当の形(割増を含むか別か)が違うと、同じ額でも中身が違います。
日本看護協会の数字は、自分の病院の数字ですか。
違います。調査に回答した病院の平均や中央値です。自分の病院の額は、給与規定や求人票で確かめます。
平均と中央値は、どちらを見ればよいですか。
平均より中央値が低いのは、額の高い一部の病院が平均を押し上げているためかもしれません(私たちの推測です)。中央値は表の数字です[S28]。自分の職場の額が中央値に近いかどうかを、先に見ると、位置づけやすくなります。
夜勤手当は、10年以上上がっていないのですか。
定額の夜勤手当の病院平均は、2010年と2025年でほとんど変わっていません[S29]。ただし、個人の受取額は、回数、基本給、割増賃金の計算、回数加算の有無で変わります。自分の明細で確かめてください。
次に読む
参照した公式情報
| 出典 | 対象 | 確認日 |
|---|---|---|
| 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(調査研究報告 No.102) | 病院が人材確保のために導入している取り組み(表63)、夜勤手当額(表58) | 2026-11-03 |
| 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(ニュースリリース 2026年3月31日) | 「2010年以降、看護職員の夜勤手当は横ばい」との見出し、夜勤手当額の推移(2010年〜2025年) | 2026-11-03 |
| 日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」結果(ニュースリリース 2026年3月31日) | 夜勤を担える条件(子どもの世話で夜勤をしていない看護職員)、夜勤を続ける条件、就業継続意向 | 2026-11-03 |
| 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」(2025年) | 看護職員個人調査(日本看護協会の会員を層別無作為抽出)の、正規雇用フルタイム勤務者の年収額(就業先別・表201)、就業先ごとの勤務形態(表172)、夜勤の有無と実施状況(表205・206)、夜勤手当の総額(表207)、オンコール対応の実施状況と手当(表210・211) | 2026-11-03 |
| e-Gov法令検索 労働基準法(昭和22年法律第49号) | 第32条(1週40時間・1日8時間)、第34条(休憩)、第37条(時間外・休日・深夜の割増。深夜は午後10時〜午前5時、2割5分以上)、第66条(妊産婦の請求による深夜業の禁止)、第15条(労働条件の明示)、第89条(就業規則の記載事項) | 2026-11-02 |
| 厚生労働省 固定残業代を採用する場合の求人票・募集要項の明示(リーフレット) | 固定残業代を含める場合に明示する3点(基本給の額・時間数と金額の計算方法・超過分の追加支払い) | 2026-11-02 |
| 日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」全体版(PDF・2013年2月発行) | 勤務編成の11基準(基準1 勤務間隔11時間以上、基準2 拘束時間13時間以内、基準3 夜勤回数は3交代制は月8回以内を基本・それ以外は労働時間などに応じた回数、基準4 夜勤の連続は2連続まで ほか)/夜勤の定義(22時〜翌5時にかかる勤務)/1965年のいわゆるニッパチ判定/待機(オン・コール)の取り扱い | 2026-11-02 |