看護フクロウ

夜勤は「続ける」か「やめる」かの二択ではありません

夜勤の曜日や回数を選べる働き方は、病院の4割超がすでに導入しています。調査の数字と、病院の規模による違い、選ぶことの引き換えを整理し、やめる前に確かめたいことをまとめます

最終更新 2026-11-03約13分で読めます

夜勤がつらいとき、考えは「続ける」か「やめる」かの二択になりがちです。辞めるほどなのか分からない。かといって、このまま続ける自信もない。二択のどちらも選べないまま、時間だけが過ぎていく。そんな状態にいるなら、まず、その間に三つ目の道があることを知ってほしいと思います。夜勤を「選ぶ」という道です。

この記事では、日本看護協会の2025年の調査から、夜勤を選べる働き方がどれくらい広がっているかを見ます。あわせて、誰が何を条件に挙げているか、病院の規模でどう違うか、選ぶことで何が変わりうるかも整理します。数字は調査の結果で、あなたの職場でそのまま使えるとは限りません。体調がつらいときは、数字を調べる前に、主治医や職場の産業医に話してください。働く人の悩みや心の不調の相談窓口は、厚生労働省の「こころの耳」[S32]でも探せます。この記事は、診断や治療の助言をするものではありません。

先に押さえる3つのこと

  • 子どもの世話で夜勤をしていない看護職員が、夜勤を担えると答えた条件の1位は「曜日を選べる」でした。ただ、4,430人全体では、「回数を選べる」は21.6%、「曜日を選べる」は14.0%で、上位は手当・明けの休み・休憩・仮眠でした[S27]。選べることは、時間に制約のある人にとっての1位です。
  • 病院の44.1%が、夜勤の回数・時間・曜日を選べる働き方を導入しています。ただし、大きい病院ほど割合は低く、99床以下で49.1%、500床以上で34.5%でした[S28]。
  • 大きい病院ほど、基本給は高い傾向がありました[S56]。選べる余地と給与水準が、逆向きに並んでいます。選ぶことは、何かとの引き換えになりうる、ということです。

数字① 夜勤をしていない人が「これなら担える」と答えた条件

日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、現在の勤務状況が自営業・離職中以外の4,126人のうち、「職場に夜勤はあるが現在はしていない(日勤のみ)」が468人(11.3%)でした[S27]。夜勤のある職場にいても、夜勤をしていない人がいるということです。

その468人のうち、夜勤をしていない最も大きな理由が「子どもの世話」だった人は170人(36.3%)です。この170人に、夜勤を担える、または続けられる対応や条件を聞いています(3つまで回答)[S27]。

条件(複数回答)割合
夜勤を行う曜日を選択できる47.6%
月あたりの夜勤回数を選択できる39.4%
納得感のある夜勤手当が支給される37.6%
夜勤明けの翌日が必ず休日のシフトとなる25.3%
夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できる24.1%
24時間対応の保育施設の整備20.0%

1位と2位は、どちらも「選べること」でした。夜勤そのものをなくすことより、いつ、何回やるかを自分で決められることが、条件の上位に来ています。

この数字から言えるのは、ここまでです。170人という限られた人の回答で、看護職員全体の希望を表すものではありません。

数字② 夜勤をしている人を含む全体では、条件の順位が変わる

同じ調査には、夜勤を担える、あるいは続けることを可能にする条件を、4,430人全体に聞いた結果もあります(3つまで回答)[S27]。

条件(複数回答)割合
納得感のある夜勤手当が支給される41.4%
夜勤明けの翌日が必ず休日のシフトとなる39.7%
夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できる35.6%
月あたりの夜勤回数を選択できる21.6%
夜勤後は定時で退勤することができる19.3%
夜勤を行う曜日を選択できる14.0%

先ほどの170人では1位と2位だった「曜日」と「回数」が、全体では4位と6位です。何を条件に挙げるかは、置かれた状況で変わります。

数字③ 病院の側は、すでに選べる仕組みを入れている

日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、人材確保のために病院が導入している取り組みを聞いています(3,502施設)[S28]。

取り組み(複数回答)割合
日勤のみ勤務54.7%
夜勤回数・夜勤時間・曜日が選択できる44.1%
短時間勤務(育児・介護休業法に定める場合を除く)39.3%

夜勤の回数・時間・曜日を選べる仕組みは、病院の4割超で導入されています。「うちの職場には無理」と思っていても、別の病院には、あるかもしれません。

ただし、この数字は「導入している」と答えた病院の割合です。誰でも使えるのか、どんな条件があるのかは、この数字からは分かりません。

数字④ 病院の規模で、選べる余地と給与水準が逆向きに並ぶ

同じ病院調査を、病床数で分けると、導入割合に差があります[S28]。一方、日本看護協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」には、勤続10年(31〜32歳、非管理職)の看護師の給与を、病床規模別に示した表があります[S56]。2つを並べます。

病床規模回数・時間・曜日が選択できる日勤のみ勤務勤続10年の基本給月額(平均)同・税込給与総額(平均)
99床以下49.1%59.5%242,638円325,553円
100〜199床45.6%60.8%247,083円333,860円
200〜299床45.3%55.7%252,769円341,523円
300〜399床37.8%44.4%263,108円354,603円
400〜499床34.0%41.6%267,610円359,623円
500床以上34.5%34.2%280,334円372,640円

左の2列は、その取り組みを導入している病院の割合です[S28]。右の2列は、勤続10年の看護師の給与の平均です[S56]。税込給与総額には、通勤・住宅・家族・夜勤・当直などの手当が含まれ、時間外手当は含まれません。夜勤をした場合は、その月に三交代で8回(二交代で4回)夜勤をしたものとして計算されています[S56]。つまり、夜勤を選んで減らした人の額ではありません。

2つの調査は、対象も年度も違います。並べて見えるのは「傾向の向き」までで、因果は分かりません。500床以上と99床以下の差は、基本給で月に約3.8万円、税込給与総額で約4.7万円です(平均どうしの差)。

数字から、まだ言えないこと

  • 導入している病院で、実際に選んでいる人が何割いるのか。
  • 選んだ人の手当や賞与が、どれくらい変わるのか。
  • 選ぶ制度があって、希望が通らなかった人がいるのか。

調査の数字は、制度の「ある・ない」までは教えてくれますが、「使えた・使えなかった」までは教えてくれません。そこは、職場に聞くしかありません。

私たちの読み方

「辞めたいわけではない。でも、このままは続けられない」。そういう中間の気持ちは、制度の言葉にしにくく、誰にも言い出せないことがあります。ここからは、上の数字を踏まえた私たちの読み方です。出典のある事実ではなく解釈なので、分けて読んでください。個別の職場で制度が使えるかどうかや、体調についての判断は、ここではできません。

数字が意味すること

私たちは、夜勤の負担を「回数」だけの問題と決めないほうがよい、と読みます。子どもの世話で夜勤をしていない人は、曜日と回数を挙げました。全体では、手当・明けの休み・休憩・仮眠が上位でしたS27]。「いつ入るか」「何回入るか」「入ったあとに休めるか」は、別々の問題です。つらさの中心がどこにあるかで、職場に頼むことが変わります。回数や間隔、休憩の物差しは、[「夜勤は月8回」は多いの? 基準の読み方と、職場に聞きたいことで整理しています。

次に、導入が44.1%という数字は、「選べる職場が半分近くある」という意味で、「あなたの職場で選べる」という意味ではありません[S28]。使える範囲は、部署の人数や勤務の組み方で変わると、私たちは見ています。ただし、これは調査で確かめた事実ではありません。

病床規模の表は、「大きい病院なら調整の余地がある」と決めつけないほうがよいことを示します。導入している病院の割合は、大きい病院のほうが低くなっていました[S28]。ただ、小さい病院の数字が高いのが、制度として整えているからなのか、個別の相談で決めているからなのかは、この数字からは分かりません。

トレードオフ

  • 収入。 夜勤を減らせば、夜勤手当は減ります。病院勤務者(正規雇用フルタイム)の夜勤手当(深夜の割増賃金を含む)は、2025年1月で平均3万2,192円でしたS56]。金額の見方は、[夜勤手当は15年ほぼ横ばい。求人票では「単価×回数」で見るにあります。賞与の査定基準に「夜勤回数」を挙げた病院は7.5%でしたが、「出怠勤」は68.1%でした[S56]。夜勤を減らす方法が「配置を変える」ことなのか、「休む」ことなのかで、評価の見え方は変わるかもしれません。ここも職場に確かめる項目です。
  • 同僚との関係。 日本看護協会のガイドラインは、働き方を選んだ場合に、同僚がその分の夜勤を担うこともあるとして、互いの事情を思いやる気持ちや、可能なときの協力が必要だと書いています[S17]。申し訳なさを感じるのは、自然なことです。私たちは、その気持ちを減らすより、期間・範囲・自分が引き受けられることを言葉にして伝えるほうが、職場が勤務表を組みやすくなると考えます。
  • 規模と給与。 基本給が高い傾向の大きい病院ほど、導入割合は低くなっていました[S28][S56]。年収の水準を優先するか、働き方の選びやすさを優先するかは、人によって答えが違います。

条件別の見立て

この見立ての根拠と、変わる条件

根拠は、日本看護協会の看護職員実態調査[S27]と病院看護実態調査[S28]、賃金調査[S56]、ガイドライン[S17]です。「つらさの中心を分ける」「前例を聞く」といった読みを引き出したのは私たちで、日本看護協会がそう書いているわけではありません。看護職員実態調査の170人は限られた人数で、賃金調査は会員への調査です。

見立てが変わるのは、次のようなときです。自分の職場に、すでに明文化された制度があるとき。職場の人数が足りず、希望を出しにくい状況のとき。調査が更新されて、導入割合や条件の順位が変わったとき。私たちは、あなたの職場の勤務表も規程も見ていません。職場の答えが、ここでの傾向と違うときは、職場の答えを優先してください。

確かめたい質問

今の職場や、候補の職場には、次のように聞けます。

  1. 夜勤の曜日を、希望として出せますか。出せる場合、どこまで通りますか。
  2. 月の夜勤回数を、減らす・固定する運用はありますか。
  3. 夜勤の免除や、日勤のみへの配置換えの前例はありますか。
  4. その場合、手当や賞与はどう変わりますか。賞与の査定に、夜勤の回数や休んだ日数は入りますか。
  5. 制度の対象になる条件(育児・介護など)はありますか。期間に決まりはありますか。
  6. 希望を出した場合、勤務表はどう組まれますか。同じ部署の人の負担は、どう調整されますか。

求人票に書かれていない項目は、「分からない」のまま判断せず、面談で聞く質問にします。求人票の条件を照合するツールを使うと、聞くべき項目が「要確認」として整理されます。

今週やること

誰かに話す前に、自分の中で整理するところから始めて大丈夫です。直近1か月について、次をメモしてください。

  1. 夜勤の回数
  2. つらかった点(回数なのか、曜日なのか、明けの休みなのか、休憩・仮眠なのか)
  3. 上の「確かめたい質問」から、まず聞くものを1つ

つらさの中心が一つ決まると、頼む内容が「夜勤を減らしてほしい」から、「◯曜日は外してほしい」「明けは休みにしてほしい」といった具体的な形に変わります。

夜勤の条件を、自分の基準で並べる

夜勤の回数や曜日を絶対条件・希望条件に決めて、現職と候補を並べて確かめます。

よくある疑問

夜勤を選べる職場は、年収が下がりますか。

一概には言えません。夜勤手当が減る分、年収は変わり得ます。年収比較ツールで、夜勤の回数を変えて、額面年収の差を確かめてください。基本給や賞与が変わるかどうかは、職場の規程によります。

調査の数字は、自分の職場にも当てはまりますか。

当てはまるとは限りません。調査は平均的な傾向を示すもので、職場ごとの運用は違います。自分の職場の実態は、上司や担当者に確かめます。

夜勤を減らしたいと言うと、迷惑がられませんか。

気まずさを感じるのは自然です。ガイドラインにも、同僚への配慮が必要だと書かれています[S17]。ただ、この記事で確認した資料には、希望を出すこと自体を禁じる決まりは書かれていません。希望の理由、期間、自分が引き受けられることを、先に整理して伝えると、話が進みやすくなります。

規模の小さい病院のほうが、選びやすいですか。

導入している病院の割合は、小さい病院のほうが高めでした[S28]。ただ、実際に選びやすいかどうかは、職場ごとに違います。割合だけで決めず、前例を聞いてください。

次に読む

参照した公式情報

出典対象確認日
日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」結果(ニュースリリース 2026年3月31日)夜勤を担える条件(子どもの世話で夜勤をしていない看護職員)、夜勤を続ける条件、就業継続意向2026-11-03
日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(調査研究報告 No.102)病院が人材確保のために導入している取り組み(表63)、夜勤手当額(表58)2026-11-03
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」(2025年)看護職員個人調査(日本看護協会の会員を層別無作為抽出)の、正規雇用フルタイム勤務者の年収額(就業先別・表201)、就業先ごとの勤務形態(表172)、夜勤の有無と実施状況(表205・206)、夜勤手当の総額(表207)、オンコール対応の実施状況と手当(表210・211)2026-11-03
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