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看護師の退職理由は年代でこう違う:20〜50代の「分かれ道」の読み方

20代は自分の健康、30〜40代は子育てや結婚、50代は介護。ナースセンター登録者の退職理由の上位を年代で並べ、数字の読み方と、今の悩みへの使い方を整理します

最終更新 2026-11-03約15分で読めます

同期が、来月で辞めるらしい。理由は聞いていない。ロッカーの前で、ふと、自分はどうだろうと考えた。夜勤明けの頭は重い。でも、辞めたいのとは少し違う気もする。それなのに、5年後、10年後の自分が今と同じ働き方をしている姿は、なぜか思い浮かばない。

(これは、読者の状況を想定した架空の場面です。実在の誰かの体験ではありません。)

「辞める理由」は、一人ひとり違います。ただ、数字を年代別に並べてみると、上位に来る理由が年代ごとに違うことが見えてきます。この記事では、厚生労働省の検討会資料にある、退職理由の年代別の集計を見ます。そのうえで、「その違いを、自分の今と、これからにどう使うか」を考えます。

進め方は3段階です。まず、出典のある数字(事実)を見ます。次に、数字を踏まえた私たちの読み方を、事実とは分けて書きます。最後に、今の悩みに当てはめる方法を示します。数字は一つの集計で、あなたの状況をそのまま表すものではありません。診断や、個別の助言はできません。

先に押さえる3つのこと

  • 退職理由の1位は、20代は「自分の健康(主に精神的理由)」、30〜40代は「子育て」、50代は「親族の健康・介護」でした。
  • ただし、これは年代の違う別々の人たちの集計で、同じ人の10年を追ったものではありません。1位でも1〜2割台で、理由はばらけています。
  • 私たちの読み方では、年代が上がるほど、辞める理由の中心は「仕事の中身」から「暮らしの変化」へ移って見えます。だから、悩みは「今の条件」だけでなく、「次の出来事が来たとき、調整が効く職場か」でも見ておくと、使い道があります。

数字:年代別の退職理由

自分の悩みが、ほかの人と同じなのか。まず、それを知りたくなります。数字から見ます。

厚生労働省の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の資料に、ナースセンターの登録データ(2024年度)の集計があります。看護経験があり、未就業または看護職以外で就業中の求職者34,197人に、退職理由を聞いたものです(複数回答)[S30]。出所は、日本看護協会 中央ナースセンターの分析報告書とされています[S63]。

20代から50代の、上位5位です(括弧内は回答者数)[S63]。

順位20代(2,577人)30代(5,835人)40代(8,450人)50代(9,599人)
1位自分の健康(主に精神的理由)14.5%子育て 16.2%子育て 17.3%親族の健康・介護 13.8%
2位転居 13.9%結婚 15.9%結婚 12.8%自分の健康(主に身体的理由)11.7%
3位結婚 11.4%妊娠・出産 15.6%妊娠・出産 12.3%子育て 10.0%
4位看護職の他の職場への興味 10.2%転居 14.5%転居 10.3%結婚 9.3%
5位夜勤の負担が大きい 8.3%配偶者の転勤 10.6%自分の健康(主に身体的理由)9.1%転居 7.9%

全体(34,197人)の1位は「子育て」の10.9%でした。60代は、1位が「定年」の26.6%、2位が「親族の健康・介護」の10.8%です[S30]。

資料は、この集計を次のように読んでいます。30〜40代では「子育て」「結婚」「妊娠・出産」、50〜60代では「親族の健康・介護」が多く、ライフステージと密接に関連する傾向があること。20代では他の年代と比べて「自分の健康(主に精神的理由)」が多く、50〜60代では「自分の健康(主に身体的理由)」といった特徴があること[S30]。

上位10位まで広げて見ると、もう少し細かい違いも読めます。次の表は、仕事の負担や条件にかかわる理由が、10位以内のどこに入っているかです(どの理由を「仕事の負担や条件」とするかは、私たちの分類です)[S63]。

年代10位以内に入った、仕事の負担や条件にかかわる理由(順位・割合)数
20代夜勤の負担が大きい(5位・8.3%)/自分の適性・能力への不安(6位・8.2%)/勤務時間が長い・超過勤務が多い(7位・8.1%)/責任の重さ・医療事故への不安(9位・7.4%)/上司(看護管理者等)との関係(10位・6.2%)5つ
30代夜勤の負担が大きい(9位・6.7%)/勤務時間が長い・超過勤務が多い(10位・6.5%)2つ
40代勤務時間が長い・超過勤務が多い(8位・6.2%)/夜勤の負担が大きい(10位・5.7%)2つ
50代勤務時間が長い・超過勤務が多い(9位・5.9%)1つ

もう一つ、体の健康に関する理由の動きです。「自分の健康(主に精神的理由)」は、20代で1位(14.5%)、30代で8位(6.8%)、40代と50代では10位以内にありません。「自分の健康(主に身体的理由)」は、20代で8位(7.8%)、30代で7位(7.5%)、40代で5位(9.1%)、50代で2位(11.7%)です[S63]。

ここまでが、出典のある事実です。

ここからは、数字を踏まえた私たちの読み方です

以下は、解釈です。事実と、はっきり分けて読んでください。最後の節に、この読み方の根拠と、見立てが変わる条件を書いています。

1. 20代:つらさの数字はある。でも、上位は「暮らし」の理由でもある

仕事に慣れる前に、体や気持ちのほうが先にしんどくなった。そんなとき「自分は向いていないのかもしれない」と考えるのは、自然な流れです。

20代の1位は、たしかに「自分の健康(主に精神的理由)」です。10位以内に、仕事の負担や条件にかかわる理由が5つ入っているのも、この年代だけです。私たちは、仕事に慣れていく途中の負担が、理由として表に出やすい年代だと読みます。数字からは原因までは分かりませんが、「20代でしんどいのは、珍しいことではない」とは言えそうです。

一方で、20代の2位は「転居」(13.9%)、3位は「結婚」(11.4%)です。上位3つのうち2つは、暮らしの変化でした。「20代の退職=仕事がつらいから」とは、数字は言っていません。

トレードオフもあります。環境を変えれば負担が軽くなる可能性がある一方で、環境が変わるたびに、「慣れるまでの期間」を最初からやり直すことになります。どちらが合うかは、負担の中身で変わります。

2. 30〜40代:理由は「1つ」ではなく、「連なって」くる

予定していなかったことが、同じ時期に重なる。そのたびに勤務の形を考え直すのは、それだけで消耗します。

30代の上位5つ(子育て・結婚・妊娠・出産・転居・配偶者の転勤)は、すべて暮らしの出来事でした。しかも、1位の「子育て」16.2%、2位の「結婚」15.9%、3位の「妊娠・出産」15.6%は、0.6ポイントの差に収まっています。順位そのものに、大きな意味を持たせない方がよさそうです。

この集計は複数回答です。私たちは、結婚、妊娠・出産、子育て、転居が、同じ人の中で順番に起きていることが多いのだと読みます(同じ人かどうかは、数字からは分かりません)。だとすると、30代の分かれ道は、「子育てという壁が1つある」というより、「出来事が続き、そのたびに働き方の条件が変わる」ことにあります。

40代では、「子育て」が全年代で最も高い17.3%で、1位です。そして、10位以内の理由の中に、この年代にだけ「家事と両立しない」(9位・6.0%)が入っています。子の年齢は集計に出ていないので、何が重いのかは分かりません。それでも、時間のやりくりの難しさが、この年代の背景にあるのかもしれません。

ここでのトレードオフは、タイミングです。

  • 出来事の前に確かめる:職場に早く伝わり、「辞めるのでは」と思われる心配があります。一方で、制度や運用を知ったうえで、準備ができます。
  • 出来事が起きてから確かめる:言い出しにくさは減ります。一方で、すでに時間がない状態で、選べる幅が狭いまま決めることになります。

私たちは、前者をすすめます。ただし、聞き方は工夫できます。「辞めるかどうか」ではなく、「この先の働き方を考えるために、制度の使われ方を知りたい」と聞く形です。

3. 50代:介護は、「子育てのあと」に来るとは限らない

親のことは、こちらの都合を待ってくれません。

50代で、「親族の健康・介護」が1位(13.8%)に上がります。20代から40代の10位以内には、この理由は入っていません。急に前面に出てくる理由です。一方で、50代の3位は、まだ「子育て」(10.0%)です。2位は「自分の健康(主に身体的理由)」(11.7%)です。

私たちは、50代は、介護・自分の体力・子育てが同じ時期に重なる人がいる年代だと読みます。「子育てが落ち着いたら、次は介護」という順番ではなく、重なることがあるのだと見ておく方が、現実に近いかもしれません(同じ人に重なっているかは、数字からは分かりません)。

もう一つの背景として、厚生労働省の同じ資料は、55歳以上の看護職員の就業者数が、2008年の17.1万人から2024年の41.3万人に増えていることを示しています[S63]。職場に50代以上の人が増えるほど、介護と仕事の両立は、一部の人の特別な事情ではなく、職場の普通の課題になっていくと考えられます。これは私たちの推測で、各職場の対応までは、数字から分かりません。

「自分の健康(主に身体的理由)」が、20代の8位(7.8%)から、50代の2位(11.7%)に上がっていることも、見逃せません。夜勤を含む今の働き方を、体力の面で、あと何年続けられるかを考えはじめる時期、と読めます。

トレードオフは、備えの時期です。介護が始まる前から勤務の調整を話題にすると、役割や収入が変わる可能性が出ます。何も話さずに突然の事態になると、選べる方法が少ない状態で決めることになります。私たちは、まず相談先を1か所知っておくところから始めるのが、負担の小さい備えだと考えます。公的な資料では、地域包括支援センターが、市町村が設置し、高齢者や家族介護者の相談に応じる窓口と説明されています[S31]。

4. 辞めた理由と、続ける条件は、別の質問

辞めた人の理由を並べられても、「自分は辞めずに続けたい」という人もいるはずです。

ここまでの数字は、辞めた人の理由です。続けている人が、何があれば続けられると考えているかは、別の質問です。同じ資料の19枚目に、日本看護協会の2025年の調査(4,430人、3つまで回答)で、働き続けるために重要視することが載っています。上位は、「業務や役割、責任に見合った賃金額である」53.6%、「休みがとりやすい」49.6%、「職場の人間関係が良い」48.5%、「希望する働き方ができる」38.9%でした。「育児・介護との両立がしやすい」は17.1%です[S63]。

辞める理由の上位は「結婚」「妊娠・出産」「介護」のような、出来事でした。続ける条件の上位は、賃金、休みやすさ、人間関係といった、日々の運用の質です。私たちはここから、次のように読みます。出来事そのものは、予測しづらく、避けられません。でも、出来事が来たときに辞めずに済むかどうかは、日頃の運用(休みの取りやすさ、希望の通りやすさ)に左右される部分があるのではないか、と。

これは仮説です。辞めた人と、続けている人を、同じ質問で比べた数字ではないからです。ただ、仮説が正しいなら、今の職場を見るときの物差しは、「今、困っているか」だけでなく、「何かが起きたとき、相談して調整が効く雰囲気か」も加わります。

5. 条件別の見立て:もしAなら、Bを確かめる

次の表は、私たちの見立てです。あなたの状況の診断ではありません。

もし、今の悩みが…私たちの見立てまず確かめること読む記事
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体や気持ちの不調が続いているときは、職場や転職の整理より先に、相談してください。働く人の悩みや心の不調の相談窓口は、厚生労働省の「こころの耳」で探せます。匿名で無料で相談できると案内されています[S32]。

6. この読み方の根拠と、見立てが変わる条件

根拠は、次の4点です。

  1. 30代の上位5つが、すべて暮らしの出来事だったこと。
  2. 20代の10位以内に、仕事の負担や条件にかかわる理由が5つ入り、年代が上がるごとに2つ、2つ、1つと減ること。
  3. 「親族の健康・介護」が、20〜40代の10位以内になく、50代で1位になること。
  4. 資料自身が、ライフステージと密接に関連する傾向があると述べていること[S30]。

弱いところもあります。

  • 年代の違う別々の人の集計で、一人の人生の順番を示すものではありません。
  • 離職して、ナースセンターに求職登録した人が対象です。今の職場で続けている人の悩みは、含まれていません。
  • 複数回答で、選択肢の中から選ばれた理由です。1位でも1〜2割台なので、1位に当てはまらない人の方が多いことになります。
  • 1年度の集計です。

見立てが変わる条件は、次のとおりです。

  • 別の年度の集計で、20代の上位に、夜勤や勤務時間が上がってくる。そうなら、「20代は心身の負担が目立つ」という読みは、見直します。
  • 続けている人を、年代別に調べた結果が出て、年代による違いが小さい(または大きい)と分かる。「辞めた理由と、続ける条件は別」という仮説を、見直します。
  • 介護と仕事の両立の仕組みが職場に広まり、50代の「親族の健康・介護」が下がっていく。そうなら、「50代で介護が重なる」という見方は、変えます。

今週やること

  1. 今の悩みを、「仕事の中身」「暮らしの変化」「体調」の3つに分けて、1行ずつ書き出す。
  2. 今後1〜2年のうちに起きそうな出来事を、1つ書く(結婚、転居、出産、親のこと、体力など)。
  3. その出来事が起きたとき、今の職場で調整が効きそうな点を、1つ書く。分からなければ、それが「確かめる質問」になる。

制度の中身は、育児・介護・復職の制度と支援から、公式ページと、各記事にたどり着けます。働き方を選ぶ条件を整理するには、働き方ナビが使えます。

今の気持ちから、確かめる質問を作る

子育て・介護・夜勤の負担など、当てはまるものを選ぶと、確認したい質問が増えて始まります。

よくある疑問

自分の悩みが、この表と違います。おかしいですか。

おかしくありません。1位でも、選んだ人は1〜2割台です。つまり、1位に当てはまらない人の方が多いことになります。自分の事情を、自分の言葉で整理することが大切です。

20代で辞めたくなるのは、自分が弱いからでしょうか。

数字からは、原因は分かりません。20代の1位が「自分の健康(主に精神的理由)」であるのは事実ですが、それは、20代で負担が表に出やすいことを示すもので、個人の強さ・弱さを示すものではありません。体や気持ちの不調が続くときは、専門家や公的な窓口に相談してください[S32]。

まだ何も起きていないのに、条件を考えてよいですか。

はい。「いつか変わるかもしれない」ことを前提に、選べる余地のある働き方を知っておくのは、無駄になりません。私たちの読み方では、出来事の前に確かめる方が、選べる幅が広い状態で決められます。

出来事の前に職場に聞いたら、辞めると思われませんか。

そう受け取る職場があるかどうかは、このサイトでは分かりません。聞き方としては、「辞める前提」ではなく、「この先の働き方を考えるために、制度の使われ方を知りたい」と伝える形があります。聞く内容は、各記事の「職場に聞いてみたいこと」の節が使えます。

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出典対象確認日
厚生労働省「第4回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」資料3 看護職員の確保策について(令和8年7月23日)ナースセンター登録者(看護経験あり・未就業または看護職以外で就業中の求職者)の退職理由(年代別)2026-11-03
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