病院以外で働く看護師の職場は何が違う? 数字で分かること、確かめること
看護師の約3分の1は病院以外で働いています。就業先ごとの夜勤・オンコール・時間外・賞与・休暇の調査の数字と、数字では分からない職場で確かめることを整理します
病棟で働きながら、「病院の外には、どんな看護師の仕事があるのだろう」と考え始めた。求人を見ると、クリニック、介護施設、健診センター、企業の健康管理室、学校、保育園と、名前は並んでいる。でも、何がどう違うのかは、よく分からない。
(これは、読者の状況を想定した架空の場面です。実在の誰かの体験ではありません。)
先に正直に書くと、健診センター・企業の健康管理室・学校・保育園については、職場ごとに分けた公的な数字を、この記事で使った資料の範囲では確認できませんでした。 確認できたのは、看護師がどの就業先にどれくらいいるか、そして病院・診療所・介護系・訪問看護ステーションの働き方の調査の数字です。この記事では、その数字と、数字で分からない部分を職場で確かめる質問に分けて整理します。
数字は調査の平均や割合で、あなたの職場の実態ではありません。体調がつらいときは、数字を調べる前に主治医や産業医に相談してください。この記事は、診断や法的な判断をするものではありません。
先に押さえる3つのこと
- 2024年末の就業看護師1,363,142人のうち、病院で働く人は65.7%です。残りの約34%(約46.7万人)は病院以外で働いています[S62]。
- 健診センター・学校・保育園は、国の概況の就業場所別の表に、独立した区分がありません。日本看護協会の賃金調査でも、回答は学校・幼稚園・保育所等が19人、検(健)診センター・労働衛生機関が24人、企業・事業所の健康管理部門が1人で、職場別の数字は出せません[S56]。数字で比べられない職場ほど、自分で確かめる項目が増えます。
- 「病院以外」でも、夜勤・オンコール・時間外・賞与は同じではありません。クリニックにも介護系にも夜勤のある職場があり、職場の種類だけでは決まりません[S56]。
看護師は、どこで働いている?
病院しか知らないと、外の景色はなかなか想像できません。まず、全体の地図から見ます。
厚生労働省の令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況から、看護師の就業場所別の人数を並べます。2024年末現在で、就業地の都道府県知事に届出のあった人数の集計です[S62]。
| 就業場所 | 看護師の人数 | 構成割合 |
|---|---|---|
| 病院 | 895,944人 | 65.7% |
| 診療所 | 194,665人 | 14.3% |
| 介護保険施設等 | 107,984人 | 7.9% |
| 訪問看護ステーション | 91,022人 | 6.7% |
| 社会福祉施設 | 28,093人 | 2.1% |
| 看護師等学校養成所又は研究機関 | 16,790人 | 1.2% |
| 市区町村 | 8,035人 | 0.6% |
| 事業所 | 5,879人 | 0.4% |
| その他 | 11,750人 | 0.9% |
| 総数(上の表にない保健所・都道府県・助産所を含む) | 1,363,142人 | 100.0% |
読むときに、押さえておきたい点が3つあります。
- 「介護保険施設等」には、施設だけでなく事業所も入っています。 概況の注では、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護老人福祉施設、居宅サービス事業所、居宅介護支援事業所等とされています[S62]。訪問看護ステーションは別の行です。
- この表の「事業所」や「その他」に、企業の健康管理室・健診センター・学校・保育園がどう数えられているかは、この資料からは分かりません。 概況に、区分の定義の説明が見当たらなかったためです。「事業所」の5,879人を「企業の看護師の人数」と読むことはできません。
- 介護の「施設」だけでも種類があります。2024年10月1日現在の施設数は、介護老人福祉施設が8,621、介護老人保健施設が4,214、介護医療院が917です[S58]。「介護施設」とひとくくりにせず、どの種類の施設かを確かめる必要があります。
就業先ごとの違いを、調査で見る
「病院を出れば、夜や忙しさが変わるはず」と思いたくなる気持ちは自然です。その期待が数字とどれくらい重なるかを、確かめておきます。
日本看護協会の「看護職員の賃金に関する実態調査」[S56]から、病院以外の就業先を含めて並べます。この調査は日本看護協会の会員から抽出した人への調査で、全国の代表値ではありません。診療所・介護系サービス・「その他」は回答数が少なく、数字は大きく動きうるので、回答数を下の注に書きます。
夜の負担
| 就業先 | 日勤のみの人の割合 | 施設に看護職員の夜勤が「ある」割合 | 前月にオンコール待機をした割合 |
|---|---|---|---|
| 病院 | 27.6% | 82.3% | 6.5% |
| 診療所 | 65.1% | 36.7% | 17.9% |
| 介護系サービス | 60.5% | 61.8% | 20.0% |
| 訪問看護ステーション | 66.2% | 20.2% | 63.1% |
| その他 | 89.6% | 20.3% | 4.7% |
時間外・賞与・休暇
| 就業先 | 2024年に賞与が「あった」割合 | 2025年1月の時間外労働時間(平均) | 2023年度の年次有給休暇取得日数(平均) |
|---|---|---|---|
| 病院 | 87.1% | 15.5時間 | 11.0日 |
| 診療所 | 80.0% | 9.7時間 | 12.7日 |
| 介護系サービス | 90.0% | 11.3時間 | 10.3日 |
| 訪問看護ステーション | 83.2% | 15.8時間 | 11.0日 |
| その他 | 85.5% | 7.1時間 | 10.3日 |
- 日勤のみの割合・オンコール・年次有給休暇は、雇用形態を問わない回答者です。夜勤の有無・賞与・時間外労働は、正規雇用フルタイムの回答者です。賞与の割合は、無回答(5〜10%程度)を含めた全体に対する割合です。
- 回答数は、日勤のみ・オンコール・年次有給休暇が、診療所106人、介護系サービス195人、その他106人です。夜勤の有無と賞与は、診療所90人、介護系サービス170人、その他69人です。時間外労働は、診療所45人、介護系サービス88人、その他22人です。
- 「その他」は、助産所、学校・幼稚園・保育所等、検(健)診センター・労働衛生機関、企業・事業所の健康管理部門などをまとめた区分です。これを健診センターや企業の数字として読むことはできません。 中身は混ざっていて、この調査では内訳を分けられません。
- 時間外労働時間は、始業前の情報収集や更衣、時間外の研修・委員会なども含みます。そのうち手当が支払われた時間は、病院9.1時間、診療所6.6時間、介護系サービス6.5時間です。
この表から言えることは、2つです。
- 「病院以外=夜勤なし」とは言えません。 診療所の36.7%、介護系サービスの61.8%で、看護職員の夜勤が「ある」と答えています。夜勤の有無とオンコールは、職場ごとに聞く項目です。
- 表の数字は、就業先ごとの「平均」です。 同じ種類の職場の間の幅は分かりません。時間外、賞与、休暇も、職場ごとに聞く項目です。
就業先ごとの年収の平均や、夜勤の有無と年収の関係は、夜勤なしで働く選択肢と、年収の変わり方の読み方で整理しています。訪問看護の夜の負担は、病棟勤務と訪問看護の働き方の違いにあります。
職場で確かめる5つのこと
聞きたいことが多すぎて、何から聞けばいいのか分からなくなることがあります。そのときは、次の5つに分けて考えると、整理しやすくなります。
数字で分からない部分は、次の5つの軸で聞くと、職場が違っても比べやすくなります。
- 夜の負担:夜勤・宿直・オンコールの有無、月の回数、手当
- 時間と休み:勤務する曜日と時間、休診日・長期休暇の扱い、残業の実態、年次有給休暇の取りやすさ
- お金:基本給、賞与(回数・月数)、各種手当、時間外手当の支払われ方
- 仕事の中身と体制:具体的な業務、看護職員の人数、困ったときに相談できる人
- 契約の形:雇用元、契約期間、常勤・非常勤の別、更新の有無
求人票の読み方は、看護師の求人票で確認したい条件にもまとめています。
職場の種類ごとに、聞いてみたいこと
気になる職場が1つ決まっていても、面談の場で何を聞くかは、迷いやすいものです。
職場の特徴を決めつけるのではなく、その職場では何がどうなっているかを確かめるための質問です。
クリニック(診療所)
- 診療時間と休診日は、どうなっていますか。土曜の勤務や、午前だけ・午後だけの勤務は選べますか。
- 看護職員は何人いますか。1人で担当する時間はありますか。
- 夜勤やオンコールはありますか。(診療所でも、夜勤のある職場があります)
介護施設
- 施設の種類は何ですか(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、有料老人ホーム、グループホームなど)。
- 夜間は、看護職員が勤務しますか。それとも、夜間の呼び出し(オンコール)の体制ですか。
- 日中の看護職員の人数と、主な業務は何ですか。
健診センター
- 健診の繁忙期はありますか。その時期の勤務時間や休みは、どうなりますか。
- 健診会場への出張や、土曜・日曜の勤務はありますか。
- 日々の主な業務は何ですか(採血、問診、保健指導、検査の補助など)。
企業の健康管理室
- 雇用しているのは、企業ですか、委託先の会社ですか。
- 看護職員は何人ですか。産業医や他の職種と、どう役割を分けていますか。
- 契約期間と、更新の考え方はどうなっていますか。
学校・保育園
- 募集の職種名と、求められる資格は何ですか。看護師として雇用されますか、別の職種ですか。
- 契約は常勤ですか、非常勤・期間の定めがありますか。長期休暇中の勤務と給与はどうなりますか。
- 医療的なケアが必要な子どもへの対応は、仕事に含まれますか。
どの職場でも、面談で聞いたことは、自分でメモに残すと、あとで比べるときに役立ちます。
私たちの読み方
ここからは、上の数字を踏まえた私たちの読み方です。解釈であって、出典のある事実ではありません。あなたの状況によっては、当てはまらないこともあります。
「病院以外に出たら、何かが楽になるのだろうか。それとも、別のしんどさが待っているのだろうか」。そう迷うのは、自然なことです。
読み方1 職場の種類は「入口」で、決め手は職場ごとの条件です。 日勤のみの人の割合は、訪問看護ステーションで66.2%、診療所で65.1%ありますが、診療所の36.7%、介護系サービスの61.8%には看護職員の夜勤があります[S56]。種類の名前だけで「夜勤がない」「忙しくない」と決めると、確かめ漏れが出ます。私たちは、「病院以外か」より先に、「5つの軸のうち、何を変えたいのか」を決めることを勧めます。
読み方2 何かが軽くなると、別のものが動くことがあります。 たとえば訪問看護ステーションは、日勤のみの人が66.2%と多い一方、前月にオンコール待機をした人も63.1%いました[S56]。夜勤が減る代わりに、夜間の待機という形で負担が残る例です。診療所の時間外労働は平均9.7時間と、病院の15.5時間より短い数字でしたが、回答は45人で、賞与が「あった」割合も診療所は80.0%と病院の87.1%より低めです[S56]。ここから「診療所は残業が少なく、賞与は少ない」と言い切ることはできません。数字が小さい分、差は偶然かもしれないからです。ただ、軸を1つ良くしようとすると、別の軸の確認が必要になるとは言えそうです。これが私たちの見立てです。
読み方3 条件別の見立て。
- 夜の負担がいちばんの悩みなら、夜勤の有無とオンコールの有無を、必ず2つ一緒に確かめてください。片方だけだと、見落としが起きやすいと考えています。
- お金の不安が大きいなら、賞与の有無と月数、時間外手当がどう支払われるかを確かめてください。時間外労働の長さと、手当が支払われた時間は別の数字です(診療所の時間外9.7時間のうち、手当が支払われたのは6.6時間[S56])。
- 数字がほとんど出ていない職場(健診センター、企業の健康管理室、学校、保育園)が気になるなら、契約の形(雇用元・契約期間・更新)と、募集の職種名を先に確かめてください。ここは公的な数字で補えないので、面談での確認が頼りになるためです。
- 仕事の中身に関心があるなら、「日々の業務を具体的に挙げてもらう」ことを勧めます。同じ「看護師の仕事」でも、職場によって中身が違うことは、この記事の数字からは見えないためです。
見立ての根拠と、変わる条件。 根拠は、2024年末の就業場所別の人数[S62]と、日本看護協会の調査の就業先別の数字[S56]です。ただし、後者は会員の調査で回答数が少ない区分があるため、方向を示す材料にとどまります。「軸を1つ動かすと別の軸も動く」という点は、この数字から私たちが読み取った推測で、職場ごとの実態は確かめていません。次の場合は、見立てが変わります。
- 健診センターや学校・保育園などの職場別の公的な集計が出たとき(その数字を見て、読み方を直します)。
- 気になる職場の条件が、面談で具体的に分かったとき(そちらを優先してください)。
- 回答数の多い調査で、診療所や介護系サービスの時間外・賞与の傾向が確かめられたとき。
今週やること
考えることが多いと、結局何もしないまま日が過ぎてしまいます。今週は、小さく1つだけにします。
いまの職場で変えたいことを、5つの軸(夜の負担・時間と休み・お金・仕事の中身と体制・契約の形)から1つだけ選んでください。そして、その1つを「◯◯は、月に何回ですか」「◯◯は、何時間ですか」のように、数字で答えが返ってくる質問に書き直します。1つに絞ると、求人票や面談で、確かめる順番がはっきりします。
よくある疑問
病院以外の職場は、夜勤がないのですか。
そうとは限りません。日本看護協会の調査では、正規雇用フルタイムの回答者のうち、施設に看護職員の夜勤が「ある」と答えた割合は、診療所で36.7%、介護系サービスで61.8%でした(回答数はそれぞれ90人、170人)[S56]。職場ごとに確かめます。
健診センターや学校、保育園の数字は、ないのですか。
この記事で使った資料の範囲では、分けた数字を確認できませんでした。国の概況の就業場所別の表にも独立した区分はなく[S62]、日本看護協会の調査も、回答が学校・幼稚園・保育所等19人、検(健)診センター・労働衛生機関24人、企業・事業所の健康管理部門1人と少ないためです[S56]。求人票と面談で、5つの軸を確かめることになります。
病院以外の職場の年収は、どうなりますか。
就業先ごとの年収の平均は、夜勤なしで働く選択肢と、年収の変わり方の読み方に載せています。ただし、夜勤の有無や職位、年齢の構成の違いが混ざった平均で、自分の年収を示すものではありません。自分の場合は、いまの給与明細と、候補の職場の求人票を並べて計算します。
病院以外の職場の情報は、どこで調べられますか。
介護サービスの事業所は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で事業所の情報が公表されています[S5]。それ以外の職場は、求人票と面談で確かめます。
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参照した公式情報
| 出典 | 対象 | 確認日 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(PDF・令和7年7月29日) | 2024年末現在の就業看護師数の就業場所別の人数と構成割合(表2)、「介護保険施設等」の範囲(表2の注)、前回調査との増減(表1) | 2026-11-03 |
| 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」(2025年) | 看護職員個人調査(日本看護協会の会員を層別無作為抽出)の、正規雇用フルタイム勤務者の年収額(就業先別・表201)、就業先ごとの勤務形態(表172)、夜勤の有無と実施状況(表205・206)、夜勤手当の総額(表207)、オンコール対応の実施状況と手当(表210・211) | 2026-11-03 |
| 厚生労働省 令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査 結果の概要(1 施設・事業所の状況)(PDF) | 訪問看護ステーションの事業所数(令和6年10月1日現在) | 2026-11-03 |
| 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(公表されている介護サービスについて) | 訪問看護を含む介護サービスの事業所情報が同システムで公表されていること | 2026-11-02 |